実際の利用者レビューでも「資料はあるのに答えない」が起きている
社内チャットボットの公開レビューには、質問で正式名称を使わないと回答が生成されないケースや、正しく回答できないため学習データを工夫する必要があるという声があります。
この問題は珍しくありません。RAGは、質問を受けると最初に関連資料を検索し、その検索結果をAIへ渡します。検索段階で必要な情報を拾えなければ、高性能なAIモデルを使っても正しい回答は作れません。
「AIが答えられない」のではなく、「答えが書いてある場所をAIが見つけられていない」場合があります。
原因1:質問と資料で言葉が違う
社内では、同じものに複数の呼び方が使われます。たとえば正式名称が「経費精算申請」で、社員は「立替」「精算」「経費」と呼んでいる場合です。
さらに、製品名の略称、旧社名、部署独自の呼び方などが混ざると、質問と資料の表現がずれて検索しにくくなることがあります。
対策
- 実際に社員が使う言い回しで質問テストをする
- 略称・旧称・社内用語を把握する
- 必要に応じて検索設定や質問理解の設定を調整する
原因2:検索方式が資料に合っていない
意味の近さで探すベクトル検索は自然な質問に強い一方、製品型番、社名、規程番号のような固有名詞ではキーワード検索が有効なことがあります。
そのため、社内文書AIではキーワード検索と意味検索を組み合わせるハイブリッド検索や、検索結果を並べ直すRerankなどを使って調整することがあります。
原因3:長い資料の「切り方」が合っていない
RAGでは、多くの場合、PDFやWordをそのまま丸ごとAIへ渡すのではなく、小さな単位に分割して検索します。この単位を一般にチャンクと呼びます。
たとえば「申請期限」と「例外条件」が別々のチャンクに分かれてしまうと、片方だけ検索されて不完全な回答になることがあります。逆に一つのチャンクが長すぎても、目的の情報を見つけにくくなることがあります。
原因4:元資料そのものがAIに答えにくい
AIは資料に書かれていない情報を正確に回答することはできません。また、古い版と新しい版が混ざっている、Excelの複雑な表だけに条件が書かれている、画像中心のPDFになっている、といった状態でも回答品質は落ちやすくなります。
大企業のRAG導入事例でも、PDF・Excelなど形式の違いによって回答精度に課題が出て、データ構造化による改善が行われています。
「もっと高性能なAIに変える」前に確認すること
- 答えの根拠になる資料が本当に入っているか
- 古い資料と新しい資料が混ざっていないか
- 社員が実際に使う言い方で検索できるか
- 検索結果に正しい資料が出ているか
- 文書分割や検索設定を変えると改善するか
正しい資料が検索できているのに回答だけがおかしい場合に、初めてAIモデルやプロンプト側の調整を疑う、という順番にすると原因を切り分けやすくなります。
ここを社員自身にやらせると、社内AIの管理業務が増える
この調整には、AIの専門研究までは必要ありません。ただし、検索結果を確認したり、文書を再解析したり、設定を変えて同じ質問を試したりする作業は発生します。
セルフサービス型の社内AIでは、この役割を社内の管理者が持つことがあります。専任IT担当者がいない小規模企業では、「AIを導入して仕事を減らしたかったのに、AIを調整する仕事が増えた」という状態にならないよう、誰が調整を担当するかを先に決めておくことが重要です。
Nexfila AIでは基本的な検索・AI設定の調整も管理側で行う
Nexfila AIは、資料をアップロードできる画面だけを提供するセルフサービス型ではなく、社内文書AIの構築・設定・保守管理をまとめて提供する先行導入サービスです。
Nexfila AIでは、検索方式・文書分割・Rerankなどを標準設定としてあらかじめ用意し、利用する側がRAGの設定を覚えることを前提にしません。個別の手作業チューニングを常時行うサービスではなく、多くの会社で共通利用できる設定を改善していく設計です。
ただし、AIが100%正しい回答を返すことを保証するものではありません。重要な判断では、回答と一緒に示される元資料を確認する運用が必要です。
先行導入:初期55,000円(税込)+月額29,800円(税込)/15〜50名程度/月10,000質問/資料10GBまで。
社内AIを比較するときの確認ポイント
- 資料を入れれば終わりなのか、初期調整まで含まれるのか
- 回答できない質問が出たとき、誰が原因を確認するのか
- 検索方式・Rerank・文書分割などを調整できるか
- 資料を差し替えたとき再解析できるか
- 回答の根拠となった資料を利用者が確認できるか
参考にした公開情報
- ITreview「RICOH Chatbot Service」レビュー:正式名称でない質問への回答
- ITreview「RICOH Chatbot Service」レビュー:学習データの調整
- DeNA Engineering:社内AIヘルプデスクのRAG精度改善
- LIFULL:社内AIボットのRAG検索精度を上げる工夫
- ソフトバンク:社内規程RAGのデータ構造化事例