結論:「担当部署の一覧」だけではたらい回しは止まらない
社内問い合わせの振り分け表では、単に「給与=人事」「パソコン=情シス」と並べるだけでなく、①受付窓口、②質問の分類、③一次対応できる範囲、④引き継ぎ先と代理、⑤受け取った人の確認、⑥完了条件まで定めます。担当部署へ転送しても、誰も引き取っていなければ未解決です。
ここでは兼任担当者がいる中小企業を想定し、総務・人事・経理・情報システムなどの一般的な例を使います。実在企業の運用例ではありません。組織構成と権限に合わせて変更してください。
混同しやすい点:振り分け表は「誰が対応するか」を決める表です。問い合わせ履歴のExcel管理表は「何が起き、どう回答したか」を1件ずつ記録する表で、目的が異なります。
部署別・社内問い合わせ振り分け表の記入例
まず過去の問い合わせを数十件だけ確認し、社員が使う言葉で分類します。「業務プロセス統制」「ITサービスマネジメント」など、窓口の外では分からない分類名にしないことが大切です。担当部署が一つで決まらないものには、最初の受付責任者を設定します。
| 問い合わせの例 | 一次受付 | 主担当の例 | 確認が必要な場合 |
|---|---|---|---|
| PCにログインできない | 共通窓口 | 情報システム・IT兼任 | アカウントの本人確認や権限操作は社内規程に従う |
| 備品・入館・施設 | 共通窓口 | 総務 | 安全性・設備障害は担当責任者へ |
| 有休・入退社手続き | 人事専用窓口 | 人事・労務 | 健康や個人情報は公開チャンネルへ転送しない |
| 経費精算・請求 | 共通窓口 | 経理 | 規程の例外や金額の承認判断は所管部門へ |
| 営業商品の仕様 | 営業管理窓口 | 製品・技術担当 | 確定仕様が不明な場合は確認してから顧客へ回答 |
| 人事システムの画面エラー | 人事窓口 | 人事+情報システム | 機密情報は最小限で共有し、システム障害と規程判断を分離 |
| 分類不能・複数の部署にまたがる | 共通窓口 | 振り分け責任者 | 内容を分割して担当を決め、1件の進捗を共通窓口が追う |
これは振り分けの例です。法律・労務・セキュリティに関する個別判断、障害対応、契約条件の承認をこの表が代替するわけではありません。人事情報など機微情報は、受付チャネルから権限を分けることも検討してください。
無料ダウンロード:担当振り分けルール表(CSV)
分類と担当をExcelで管理できる登録不要のCSVテンプレートです。14項目・架空の記入例6行を収録。メールアドレスや氏名は架空例でも入れず、役割名で管理する形式にしています。CSVは自動振り分けプログラムではありません。
問い合わせカテゴリ、具体的な例、受付窓口、一次回答の範囲、主担当部署、代理担当、引き継ぎ条件、優先度、着手の目安、引受確認、完了条件、FAQ更新担当などを記録できます。
文字化けする場合は、Excelの[データ]→[テキスト/CSVから]でUTF-8を指定してください。Microsoftの案内も参照できます。
受付から完了までの5ステップ
1. 受付で何が必要かを揃える
「困っています」だけでは担当部署も必要な対応も決められません。受付時には、用件、影響する業務、いつまでに必要か、現在どこまで試したかを確認します。最初から社員に大量の入力を求めないようにし、個人情報・機密情報を公開の場に貼らせないこともルール化してください。
2. まず資料やFAQで答えられるか確認する
確定した社内規程や手順書にそのまま回答がある場合は、現行版へのリンクを添えて案内します。例外の承認、新規の判断、権限付与や個人情報を伴う手続きまで「FAQに書いてあるから」で終わらせないでください。社内問い合わせを効率化する手順では全体の改善方法を解説しています。
3. 担当部署と引き継ぎ条件を判定する
たとえば「経費精算の画面が開かない」は、経費のルールの問題なのか、システム障害なのかを切り分ける必要があります。どちらも不明なら、最初の受付者が勝手に両部署へ転送して終わるのではなく、仮担当を一人決め、どちらが対応するか確認します。
4. 受け取った側の引受確認まで追う
引き継ぎメッセージに「担当者・必要な判断・期限・確認済みのこと・未確認のこと」を添えます。転送済みと引受済みは別です。引受確認が来ない場合は、最初の窓口担当が期限を過ぎた案件を拾います。特定の担当者が休みの場合は、あらかじめ決めた代理先へ回します。
5. 質問者へ結果を返し、FAQに戻す
担当者が回答を作っても、質問した社員が必要な情報を得られなければ完了ではありません。回答、実施が必要なこと、追加対応の有無を返し、業務上の完了条件を満たすか確認します。何度も聞かれる質問は、所管部署が内容を確認してからFAQや手順書に反映します。
「どの部署が担当?」が曖昧な問い合わせへの対処
| ケース | 避けたい対応 | 代わりに決めること |
|---|---|---|
| 人事システムに入れない | 人事とITが互いに転送 | 初期受付は人事、認証障害はIT、権限付与判断は人事など条件を分ける |
| 2部署に関係する依頼 | 同じ問い合わせを二重受付 | 統括する窓口を1か所に決め、業務の論点ごとに分けて依頼 |
| 担当者が不在 | 復帰まで放置 | 代理担当・上長・共通窓口のいずれかへ戻す |
| 緊急の安全・情報漏えいリスク | 通常の受付キューで待機 | 社内インシデント・安全対応規程の連絡ルートを優先 |
| 社員の個人的な相談 | 全員が見られるチャットへ転送 | 人事など権限を分離した相談先へ引き継ぐ |
受付期限・エスカレーション条件の決め方
「原則24時間以内」のような数字を根拠なく全社で設定しないでください。業務量、営業時間、重大度、担当者の人数に合わせて一次返信と本回答の目安を決めます。例として、通常の規程照会なら「翌営業日の受付確認」、業務停止なら「専用の緊急連絡先へ即時連絡」といった区別ができます。これは仮の運用案であり、サービス品質保証ではありません。
エスカレーションは「答えが分からないから上司へ」と単純化せず、上長・専門部署の判断が必要な条件を設定します。担当不在、通常期限の超過、権限を超える承認、安全・法令上の問題を分けます。DTSの社内問い合わせエスカレーション解説では、内容による切り分けと対応状況の追跡を取り上げています。Slackの公式記事も、段階・報告先・代替ルートを先に決めることを推奨しています。
振り分け表と問い合わせ履歴表の違い
| 表 | 1行で表すもの | 主な用途 |
|---|---|---|
| 今回の振り分け表 | 1つの問い合わせ分類と対応ルール | 迷わず担当部署を決める/引き継ぐ |
| 問い合わせ履歴表 | 実際に発生した1件の問い合わせ | 受付日、対応経過、回答、未完了を管理 |
| 社内FAQ | 社員の1つの質問と正式な回答 | 次回は担当者へ聞かずに自己解決する |
表を作った後も、月に一度など無理のない間隔で「その他の割合」「引継ぎが滞った分類」「誰にも引き受けられなかった件」を確認し、分類と担当を見直してください。問い合わせ履歴を記録する無料CSVと組み合わせれば、ルールと実態を別々に管理できます。
Nexfila AIに任せられること・任せられないこと
社内の既存PDF・Excel・Wordなどを登録し、社員が自然文で質問して出典付きで答えを探す用途なら、Nexfila AIも選択肢です。社員が同じ手順を何度も聞く場合、確定した資料を見つけやすくすることで、担当者への照会を減らせる可能性があります。先行導入は利用開始日から30日間無料、以降は会社単位月額14,800円(税込)、月5,000質問・資料5GBです。
ただしNexfila AIは問い合わせチケット管理、承認、担当者への自動割当、引受確認、社員への自動返信まで標準提供するものではありません。 それらが必要なら専用の受付・チケットシステム等を使い分けてください。文書・社員・閲覧範囲・業務判断は利用企業が管理し、Nexfilaが標準のAI基盤設定・保守・更新・基本障害対応を担当します。社内ヘルプデスクAIとチケット管理の違いも参考になります。
よくある質問
社内問い合わせの担当振り分け表には何を書きますか?
問い合わせ分類、例、一次受付、主担当、代理担当、引き継ぎ条件、引受確認、対応の優先度と完了条件を記載します。部署名だけでは引き継ぎ後の放置を防げません。
人事と情シス、どちらも関係する問い合わせはどうしますか?
1件の統括窓口を決め、システム上の問題と権限・規程上の判断を分けて担当を指定します。機密性に応じて共有する情報を制限してください。
Excelだけで担当者への振り分けを自動化できますか?
今回のCSVは振り分け判断を統一するための表で、自動通知や引受確認はできません。自動化が必要なら対応する専用システムと連携を検討してください。
社内AIを導入すれば振り分け表は要らなくなりますか?
いいえ。既存資料から答えを見つけることと、例外的な判断・承認・処理を担当部署へ割り当てることは別です。
参考資料と関連記事
- DTS:社内問い合わせのエスカレーションルール
- Slack:エスカレーションフローの設計
- Salesforce:エスカレーションの作り方
- Slite:Internal documentation(海外記事。正本・責任者・問い合わせを文書に戻す運用の着想)
関連する記事
上記の部署振り分け・期限は説明用の例であり、実際の社内運用や法令上の対応義務を示すものではありません。参照した公開資料の確認日:2026年10月15日。